名脇役と謳われた女優沢村貞子、明治41年生まれ。その自伝。生家は東京浅草の役者一家。いかにも江戸っ子らしいキレがある。それにしても文章が上手い。プロの物書きのようだ。そして語られるに値する壮絶な半生。大正昭和の重苦しい時代、人並み外れて強い意思と潔癖さを持った女性が、自分に誠実に生きようとしたことで味わった体験のすさまじさにたじろぐ。「私は、私の青春を充分なやむことができた」