厚労省の課長だった村木厚子さんは、ある日突然身に覚えのないことで逮捕された。拘置所に入れられ検察官から取り調べを受ける。いくら無実を述べても検事は取り合ってくれず、やがて長い勾留のはてに自分の意に反した調書が作成されていく。検察には検察が描く事件のストーリーがあり、それにそって取り調べが進められるようだ。結局この事件は、検事が自分たちのストーリーを完結させるのに都合の悪い証拠を改竄するという前代未聞の検察犯罪に発展し、終わった。
そうやってつくられる冤罪もあるということ、憲法で保障された身体の自由が現実にはこんなにもろく侵されてしまうということに驚きと恐怖を感じる。正義の味方が正義の味方でなくなる社会などあってはならない。その後司法制度のあり方が問われ、取り調べの可視化など改善が求められているが、検察側は消極的だという。憲法の理念の実現に向け、私たちは権力の行使に無関心であってはならないと思った。
*企画展示「今こそ考えよう日本国憲法(このくにのかたち)」から