なちかつ
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 一つ、詩人は戦争のことを書いている。一人称の私が主体的に見て聞いて考え判断していかないと、いつの間にか引き返せないところまで行ってしまうと書いている。自分に問いかけよ、いつも問いを持てというのが長田の詩の特徴なのかもしれない。絵本『最初の質問』もそうだった。

 その戦争のことを書いた詩。「どこにも問いがなかった。疑いがなかったからである。誰も疑わなかった。ただそれだけのことだった。 どこにも疑いがなかった。信じるか信じないか、でなかった。疑うの反対は、無関心である。ただそれだけのことだった。 どこにも真実がなかった。真実とされるものは、しばしばまがいものだったからである。ただそれだけのことだった。 そこにあるものを、目が見ない。そこにあるものを、耳が聴かない。そこにあるものを、からだが知らない。ただそれだけのことだった。 どこにも危険はなかった。危険もまた、最初はただ、些事としてしか生じないからである。ただそれだけのことだった。 あらゆることは、ただそれだけの些事としてはじまる。戦争だって。」 “疑うの反対は無関心である”という言葉は重い。 

2024年 (令和6年)
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