帯に「問答無用の著者最高傑作」とある。今をときめく人気作家 辻村深月のしかも最高傑作とは? 確かにおもしろい作品だ。緻密で一部の隙もなく完璧に構成されたファンタジー作品というべきか。もともと大きな物語世界があり、その枠の中でストーリーが展開していって、最後にすべてのつじつまが合うといったつくりになっている。そういう意味で読者を引き込み、楽しませる作品だ。
しかし、それ以上に、作品の土台となっている思春期の少年少女の心の揺らぎや、その子どもたちに真摯に向き合う大人たちの思いがていねいに、実にていねいに描き出されている。かがみの孤城にはそれぞれに人間関係で傷つき壊れた心を持つ7人の中学生が集められた。そこでの共同の時間を重ねていくうちに、子どもたちは少しずつそれぞれの自分を取り戻していく。自分や友だちを大切に思う心、人に頼ってもいいんだと思う心を取り戻していく。人との関係で傷ついた心は、やはり人との関わりの中でのみ癒され修復されていくのだというメッセージを受け取った。