自分かどんな死を迎えるか、それは誰しもわからない。この作品の主人公雫のように、まだ十分若くして、しかし確実に迫り来る死と向き合って日を送らなければならなくなったら・・。恐怖、苦痛、絶望、虚無感に打ちひしがれても、それでも残された時間を精一杯生き、幸せに最期を迎えることができる。作品では、死にゆく人に真心をもって寄り添い、最後までその人の尊厳を守り通そうとする人たちの姿が描かれている。その仕事ぶりと精神性の尊さに胸を打たれる。
「おやつの時間をあなたが毎回とても楽しみにしてくれたことが何よりの慰めです。おやつは、体には必要のないものかもしれませんが、おやつがあることで、人生が豊かになることは事実です。おやつは、心の栄養、人生へのご褒美だと思っています。ごちそうさまでした、って、あなたは確かにそう言いました。いかにもあなたらしい、情の深い、美しい言葉。きっと、あなたの人生そのものが、おいしかったのでしょう」