装丁、写真、文章、どれもが落ち着きと気品に満ちた上質な本。ゆっくり1ページ1ページを読んでいくと、まるで雰囲気のいい珈琲店で極上の一杯を味わったような深い満足感を得る。珈琲を淹れる道具の話から始まり、淹れ方、豆の精選や焙煎のこと、珈琲豆のふるさとエチオピアの話、そしてさまざまな珈琲の愉しみ方へと話は続いていく。一杯の珈琲にたどりつくまでの実にたくさんの手間。おいしい珈琲を飲んでもらいたい、飲みたい、という思いをもった人たちの幾重もの手間こそが、珈琲の奥深さだと知る。「珈琲であれ、もしくは料理、菓子であれ、相手のために丁寧に作られた愛ある食べ物からは、美味しさはもちろん、それだけではない感情を受け取ることができます。飲み手のことを考え、意思や思想がこもった珈琲こそ美味なものでしょう。相手を想う真面目さと美味しさを求める行為は深く繋がっているのではないでしょうか。少し珈琲の世界を深めて、あなたらしい味のある珈琲を作っていただければ、嬉しいです」とは、筆者の人柄がにじみ出る。
なちかつ
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