パリに実在する女性救済施設を舞台に、現代社会における女性の貧困、人権問題と、そこに立ち向かう人々の姿が描かれる。主人公は二人の女性。ソレーヌ、気鋭の弁護士だった。クライアントの自殺をきっかけにうつになり、その治療もあって施設でのボランティアを勧められた。彼女の目を通して、会館に住まう女性たちのさまざまな苦難があぶりだされていく。もう一人はブランシュ、およそ百年前、施設設立のために命がけで奮闘した。現代と過去が交錯する物語は、読者に同じ時代に生きるものとして何ができるか、何をすべきかを問いかけている。「森の大火事のとき、一羽のちいさなハチドリだけがせわしなく嘴に水をたくわえ炎に水滴をかける。憐れなばか者、そんなことしたって火は消えない。わかってる、とハチドリは答える。だけど、せめて自分にできることはする。」
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- 作成者:NCL編集部
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ブレグジットで揺れたイギリスのおっさんたちの話である。登場するおっさんはみな60代で著者の連れあいの幼なじみだ。著者言うところの“地べた”を生きてきた、れっきとした労働者階級のおっさんたちである。彼らの多くは今回のブレグジットで離脱票を投じ、まさかの結果をもたらした“裏切り者世代”と非難されている。しかし、おっさんたち一人一人にそれぞれの人生があり、それは英国が「ゆりかごから墓場まで」といわれた福祉国家から、現代の新自由主義社会へと変化した時代の流れと無関係ではない。本書の原題というか英語の書名は“Still Wondering Around The Wild Side (いまだにワイルドサイドをさまよっている)”となっている。still(いまだ)には、いい年をして成長しないという、おっさんたちへのあきれたようなニュアンスがある。また、wonderingをほっつき歩くと表現した著者は、そのおばちゃん感覚全開で、これら愛すべきおっさんたちへのウオッチングを試みる。英国のEU離脱を書いた本は数多くあるが、この本はまさに地べた、庶民の目線で現在のイギリス社会を描いている。それが不思議に日本のおっさんの共感を呼ぶ。
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著者はわな猟の猟師。主にねらうのはイノシシとシカだ。本書ではわなの仕組み、わなのしかけ方、獲物の解体方法などが、豊富な写真と絵でわかりやすく紹介されている。読んでいて、何というか少し精神的な負荷を感じるのは、わなにかかった獲物にとどめを刺すところ、その動物の命を奪う場面だ。小さな虫や魚ならまだしも、大きな動物になればなるほどその命を奪うことは残酷なことに思われる。しかし、私たちはその動物の肉をおいしくいただいている。捕獲、屠殺、解体の過程に関わることのない私たちは、肉を食するときその動物の命を意識することはほとんどない。それが意識されるのは殺すときだ。獲物の急所をこん棒で力いっぱい殴りつけ、動きがとまったすきに素早くナイフで心臓を突き刺す、または頸動脈を切る。その行為は残酷か。ならば私たちは命をどのようにいただくべきか。この本はそんなことを問いかけてくる。
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