日本語そのものと学校教育における国語・英語教育を考えるうえで、非常に刺激的な本。著者の言語についての深い考察がベースになっており、“現地語”、“国語”、“普遍語”というとらえ方に説得力がある。
爆発的なインターネットの発達で圧倒的な普遍語となった英語。それに対して国語である日本語を守っていくことの大切さと困難さ。国語を失うことは民族として滅び去ることである。「わが国は国民のすべてが英語が使えるようになる必要はないこと、英語が読める力をつけさせること(話す、書くことよりも)に重点を置くこと、わが国のすぐれた近代文学を読み親しませること等を、学校教育で目指していかなければならない」と著者は主張している。幕末維新期の<叡知を求める者>たちが必死の思いで西洋語を学んだその百分の一でも見習って、私も「二重言語者」になりたいものだと思った。
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- 作成者:NCL編集部
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はるかに遠いスペインのさらに辺境、アンダルシア地方。そして100年も前のこと。不思議なことに、読むほどにその田舎の素朴な情景が、淡い輪郭をもって浮かんでくる。いつもプラテーロと一緒に村や野山を歩み、やさしくプラテーロに語りかけている詩人は、どこか超然とした雰囲気を持っており、目に映る自然や村のようすを透徹した目で描き出す。今現在の自分からはるかに遠い遠いところへ連れて行ってくれるような本。
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著者は1984年生まれで、本業は水墨画家。奥深い水墨画の世界を(どんな世界も突き詰めれば奥は深いが)、みずみずしい文章で描いている。水墨には色がない、そして塗るということがない。墨で描くただ一本の線。その線は対象を描きつつ、実は僕を描くのだという。喪失感で心にぽっかり穴が空いた青年青山霜介と、水墨の大家湖山先生との出会いから物語は始まる。登場人物は少なく、その一人一人が真摯に自分の水墨を追求していて魅力的だ。すがすがしい読後感の青春小説。
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