厚労省の課長だった村木厚子さんは、ある日突然身に覚えのないことで逮捕された。拘置所に入れられ検察官から取り調べを受ける。いくら無実を述べても検事は取り合ってくれず、やがて長い勾留のはてに自分の意に反した調書が作成されていく。検察には検察が描く事件のストーリーがあり、それにそって取り調べが進められるようだ。結局この事件は、検事が自分たちのストーリーを完結させるのに都合の悪い証拠を改竄するという前代未聞の検察犯罪に発展し、終わった。
そうやってつくられる冤罪もあるということ、憲法で保障された身体の自由が現実にはこんなにもろく侵されてしまうということに驚きと恐怖を感じる。正義の味方が正義の味方でなくなる社会などあってはならない。その後司法制度のあり方が問われ、取り調べの可視化など改善が求められているが、検察側は消極的だという。憲法の理念の実現に向け、私たちは権力の行使に無関心であってはならないと思った。
*企画展示「今こそ考えよう日本国憲法(このくにのかたち)」から
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科学絵本としてとてもよくできている。まずはじめの問いかけがいい。“ぼくたちはそらのしたでくらしています。そらのうえにはなにがあるかしっていますか?(改ページ)うちゅうです。・・うちゅうはとてもとおいばしょなのかもしれません。どのくらいとおいばしょなのでしょうか?” そして読者の目は東京の街の公園の地面から空に向かって上がっていく。目の高さからだんだん高度を上げて見える景色の絵が続く。その絵がとても細かくていねいに描かれている。そして最後は宇宙へ。しかし、最後の最後でスイカとそのたねの絵を例示し、宇宙が地球の大きさから見てそう遠いとことではないことを教えてくれる。問いに対する答え、そして答えに至る過程がきちんと描かれて、文は平易だが、科学的に正しさを保つべく表現が工夫されている。雲の中は実は霧の中にいるのと同じという場面の絵や、いくつもの雲が層をなしているようす、雲の上の深い紺色の空、昼間だというのに星が輝いているほとんど宇宙と呼べる場所の絵など、正しく描かれているのだろうと思う。むしろ写真より絵のほうがわかりやすく伝えられるのではないだろうか。最後の“ぼくたちはこんなせかいでくらしているのですね”の場面は、宇宙や科学をぐっと子どもに引き寄せる効果があると思った。
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「写真は本来他者を知り、他者の心を引き出し、自分が見た事象を他者に伝達するという機能をもつ」写真家藤原新也は一徹にそんな思いで写真を撮ってきた。インスタグラムが大流行の今日、“Look at me”とひたすら他者の視線を求め自分のみがそこに存在する写真の氾濫に違和感を覚えつつ、それもまた写真と受けとめる。そしてその上で、これが「おれの写真」と、氏が切り取った写真の一点一点をその対象への思いとともにランダムに示してみせる。ねこ、人、花、風景・・。同じ時代に生きる者としてハッとさせられる写真がいくつもある。でも、それも人それぞれか。
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