体の不自由な人のため、40年間で2600台もの自転車を作り続けてきた堀田健一さんの挑戦を描いたノンフィクション。もの作りが大好きだった堀田さんは一人ひとりに合った自転車を1台1台手仕事で作り上げていった。どんなことでも続けるということがすごいし、尊い。それが人のためになり人から喜んでもらえることなら、これ以上幸せな人生はないと思った。しかし、現実には商売としての採算はとれず、堀田さん一家は光熱費まで止められるというどん底の生活を味わう。それでも自転車づくりを続けたのは堀田さん一人の心の強さだけではないだろう。筆者は、堀田さんが人との関わりの中で自身の仕事の価値に気づいていく過程も描いている。
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装丁、写真、文章、どれもが落ち着きと気品に満ちた上質な本。ゆっくり1ページ1ページを読んでいくと、まるで雰囲気のいい珈琲店で極上の一杯を味わったような深い満足感を得る。珈琲を淹れる道具の話から始まり、淹れ方、豆の精選や焙煎のこと、珈琲豆のふるさとエチオピアの話、そしてさまざまな珈琲の愉しみ方へと話は続いていく。一杯の珈琲にたどりつくまでの実にたくさんの手間。おいしい珈琲を飲んでもらいたい、飲みたい、という思いをもった人たちの幾重もの手間こそが、珈琲の奥深さだと知る。「珈琲であれ、もしくは料理、菓子であれ、相手のために丁寧に作られた愛ある食べ物からは、美味しさはもちろん、それだけではない感情を受け取ることができます。飲み手のことを考え、意思や思想がこもった珈琲こそ美味なものでしょう。相手を想う真面目さと美味しさを求める行為は深く繋がっているのではないでしょうか。少し珈琲の世界を深めて、あなたらしい味のある珈琲を作っていただければ、嬉しいです」とは、筆者の人柄がにじみ出る。
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自分かどんな死を迎えるか、それは誰しもわからない。この作品の主人公雫のように、まだ十分若くして、しかし確実に迫り来る死と向き合って日を送らなければならなくなったら・・。恐怖、苦痛、絶望、虚無感に打ちひしがれても、それでも残された時間を精一杯生き、幸せに最期を迎えることができる。作品では、死にゆく人に真心をもって寄り添い、最後までその人の尊厳を守り通そうとする人たちの姿が描かれている。その仕事ぶりと精神性の尊さに胸を打たれる。
「おやつの時間をあなたが毎回とても楽しみにしてくれたことが何よりの慰めです。おやつは、体には必要のないものかもしれませんが、おやつがあることで、人生が豊かになることは事実です。おやつは、心の栄養、人生へのご褒美だと思っています。ごちそうさまでした、って、あなたは確かにそう言いました。いかにもあなたらしい、情の深い、美しい言葉。きっと、あなたの人生そのものが、おいしかったのでしょう」
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