1924年(大正13)和歌山県日高郡生まれ、現役最高齢の助産師坂本フジヱさんの一代記。和歌山のばあちゃんが紀南の田舎言葉でしゃべってくれる。幼いころの貧しいけれど人に優しかった母親の思い出。「母が示してくれた“無財の七施”、人を幸せにするのにお金はいらん。その教えは私の根っこになってる」、現代の若い母親たちに贈る子育ての話。「子育てと梅仕事はよう似てる。いちばん大事なんは待つこと。ちょっかい出すんはほどほどに」、「子育てで大事なんは“足るを知る”子を育てることです。おなかが満たされんと心が満たされん。感謝する気持ちが育ちません。生まれてから最初の一年間、赤ちゃんは神仏の領域にいます。無条件の愛情を注いだらいいんです。その一年で親に感謝する心、親を信頼する心が育ったら、あとの子育てはほんまに楽になります」 93歳、人としてまっすぐに生きてきた人の素朴な話は心に染み入る。
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愛なき世界とは植物のこと。植物は生きて子孫を残すのに愛を必要としないから。T大大学院でシロイヌナズナの葉を研究している本村紗英は、一生を植物の研究に捧げようと心に決めている。そんな本村に恋をした藤丸陽太。藤丸はT大そばの洋食屋で見習い店員をしている料理人の卵だ。二人は互いに惹かれ合い、互いの仕事ぶりに敬愛の情を寄せるが、本村の「愛なき世界」への気持ちは固く、愛ある世界は成就しそうにない。
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16世紀、イベリア半島からイスラム勢力が追い出されようとしていた時代のスペイン・アンダルシア地方が舞台。8世紀にイスラムがこの地方に入って以来、キリスト教徒とイスラム教徒は平穏に共存していたようだ。レコンキスタ(国土回復運動)とはキリスト教国の絶対王政が中央集権的な国家を作り上げるために、宗教の純化を利用したのかもしれない。弾圧はモリスコ(キリスト教に改宗した元イスラム教徒)にまで及ぶ。そんな時代の中で、家族ぐるみ友人として暮らしていた二つの家族(キリスト教徒とモリスコ)は過酷な運命に翻弄される。互いの信仰や習慣を尊重しながら平穏に暮らしていた生活は破壊され、憎悪ばかりが膨らんでいく。引き裂かれた二家族の末息子と末娘の生涯の恋心が切ない。現代でもなお解決されない問題。宗教とは人を不幸にするためにあるのだろうか。タイトルの太陽はキリスト教を、月はイスラム教を表している。
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