1939年、第二次大戦が勃発し、イギリスのロンドンにはドイツ軍による侵攻、空爆の危機が迫っていた。母親の虐待から逃げるように弟といっしょに疎開列車に飛び乗った11歳の少女エイダ。エイダは生まれつき足首が奇形で歩くことができず、母親から外に出ることさえ許されていなかった。およそ人間らしい生活からほど遠く、心も荒んでいた。疎開先の英仏海峡に面した村で、姉弟はスーザンという一人暮らしの女性に預けられる。「子ども嫌い」というより人に心を閉ざしていたスーザンは、戦時下の特殊な状況の下、強制的に疎開の子どもたちを引き受けさせられたのだ。が、月日が経つにつれエイダは少しずつ人間らしさを取り戻していき、スーザンの閉じていた心、だれかを愛する気持ちも徐々に開かれていく。作品ではその過程が実にていねいに描かれていく。一筋縄ではいかないのだ。いくつもの衝突を迫真の叙述で描きながら、じれったいほどゆっくりと。姉弟とスーザンの3人をとりまく人々やエイダの愛馬バターの存在も重要だ。心を通わせる関わり合いの中で、それぞれが自分の運命と戦い、お互いを愛し、人間らしい生活を築いていく。物語の終末に急な転回があるが、最後は感動的な結末を迎える。
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こんないい話が和歌山県内の話であることがうれしく、少し誇らしい気持ちにもなる。著者の江川紹子さんはオウム事件の究明で知られる著名なノンフィクション作家だ。そんな人が何度も和歌山に足を運んで取材を重ね、この本を著した。しかも本人曰く、「この取材のために和歌山に通い、もかと一緒にいる日々は、私にとってそれはそれは幸せな時間でした。」 その言葉のとおり、この本には心温まるエピソードがいっぱい詰まっている。溝の中で半死に状態で保護された子犬のもか吉が、飼い主家族の懸命の努力でボランティア犬に成長していくようす。そして、人と犬とのつながりが地域にすてきな活動の輪を広げていくようす、などなど。
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政治思想史・政治哲学の研究者が女子中高生と政治について考える。と言っても決して固い内容ではなく、身の周りのできごとを切り口に、あらゆることが政治と関わっていることを確かめながら話は進んでいく。なぜなら、友だち同士から国際社会まで互いに異なる人たちが一緒に暮らしていく仕組みが政治だから、と筆者は言う。なるほど、私たちは一人では生きられず、考えてみれば生活に必要なもののほとんどは会ったこともないどなたかの世話になっている。人間はみな「人と一緒にいる」のだ。
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