佐野洋子さんのエッセイは気軽に読めておもしろい。とにかく飾らない。品があるかと言えば、ほとんどない。言葉遣いもよろしくないし、自分のことのみならず人のこともあけすけに書く。数々の名作を世に残した絵本作家だから非凡な才能の持ち主であろうに、しかし、自分は生きてきて何も役に立たなかったただのババアだと言い放ち、奔放にただのババアの本音を書いている。だからおもしろい。臨床心理士の河合隼雄氏との会話。「私が何か言うと男の人がうしろに飛び退くように感じることがある」、「それは佐野さんが本当のことを言うからです。みんな本当のことは嫌いなのです。本当のことは言ってはいけません」、私は何かとても恥ずかしかったが、自分で、何が本当であるか本当でないかわからないのだった・・と、こんな調子。
それにしても、いつもすごいと思うのは、佐野洋子さんの読書量だ。本人は意味もわからず何も残っておらずと言うが、外国文学に日本の古典、まったく半端じゃない量を読んでいる。やっぱり凡人じゃない。
佐野洋子さんの作品にはほかに、自身の母親との葛藤をつづった『シズコさん』、余命〇〇と告げられて佐野洋子流の死生観を語った『死ぬ気まんまん』などがある。
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紀伊半島はプレートの動きによって生み出された3つの大地で成り立っている。すなわち、海洋プレートと大陸プレートの境界で海洋プレートに押しつけられてできた付加体、付加体のへこみに陸から運ばれた土砂が堆積してできた前弧海盆堆積体、さらに火山活動でできた火成岩体の3つだ。これら3つの大地が地震のたびに隆起したり、雨水や波で浸食されたりして現在の熊野地方の特徴的な地形が形成された。本書はジオパークの趣旨に沿い、当地方の地形について大地の成り立ちを軸に、そこに生きる人々の歴史や文化、動植物、災害などを関連づけてわかりやすく紹介している。
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桜の季節も終わり、熊野の山々はモリモリとした新緑の力を感じる季節になってきました。
まさに「空青し山青し海青し」といったところでしょうか。
これは和歌山県新宮市出身の佐藤春夫の『望郷五月歌』の一説ですが、ほかにも『秋刀魚の歌』といった熊野人の香り漂う作品を遺しています。
以下その『秋刀魚の歌』の一節です。
「さんま、さんま、
そが上に靑き蜜柑の酸(す)をしたたらせて
さんまを食ふはその男がふる里のならひなり」
『文豪の家』では、そんな佐藤春夫や、佐藤に妻を譲った谷崎潤一郎、「芥川賞をください」と懇願した太宰治など名だたる文豪の作品が生み出された書斎や筆や硯といった道具まで垣間見ることができます。その空間からは、それぞれの作風に通じるものを感じることができます。
『おしえてわかやま 方言編』では今ではあまり使われることのない方言から、方言だと気づかず使っていて「これって方言だったんだ!」と新発見するものまで、楽しめる内容となっています。
身近にあってなかなか見直すことの少ない「ふるさと」ちょっとだけ見つめてみませんか?また新しい一面に気が付くかもしれませんよ。
NSL(ひつじ)
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